河合九平(旧中19回卒)

河合九平(旧中19回卒)

 母校浜西は、いよいよ中高一貫教育の一期生を来春に送りだす。画期的な新制度だけにその成果が注目されている。

 思うに、創立八十年余の歴史を一貫してきた精神は、端的に校訓の示す「高い知性(知)」「豊かな心(仁)」「たくましい力(勇)」の統合された、いわゆる<西山魂>とまとめることができよう。

 それは、大洋と芙蓉を望み、時に空っ風にさらされる「西山台」という自然環境のもと、“文武両道”による“若き紳士”の育成という建学精神とにより、約二万五千人の若者が、己がじしその青春を燃やして掴みとった<生きるエネルギー>そのものであった。

 特に、西山台の目指した学びとは、平易にいえば「五感・五体による体験的学習の徹底」ということであったろう。つまり、豊かな感性が高い知性を生み、さらに旺盛な実践力に発展するという感性・感動を重視した学びで、これは脳の仕組みから見ても当然な学習観といえる。

 こうして身についた真の学力は、単なる知識技量をこえ、自分の人生を生き抜く力(知恵・エネルギー)として生涯の糧となり得るまさに、<西山魂>というにふさわしいものである。

 「はままつの教育」は「知・徳・体」の調和的人間像として〔健やかな子〕を掲げている。その“健やかさ”が、さらに深められて“強(した)たかさ”にまでなったのが〔やらまいか根性〕ではないだろうか。

 強靭な精神力と不撓不屈な実践力が〔西山魂〕や〔健全児〕の真髄と自負し、さらに共同性の加わった〔やらまいか根性〕に誇りを持つとき、“体が魚になるまで泳げ”と<泳心一路>の古橋廣之進氏(旧中18卒)と、“体が球になるまで追いかけろ”と<球心未摑>の太田誠氏(高7卒)とのお二人が「やらまいか大使」としてご活躍されることは、新政令市浜松と母校浜西の発展にとってまことに喜ばしく、市・学校における得がたい金字塔となりましょう。

(12代校長・元浜松市教育長・現浜名湾游泳協会会長)