大石 健次さん(高9回) 38年間の教員生活を終え、若いころから夢見てきた理想の人間道場「立志館」を平成12年4月にスタートさせました。不登校の子どもらを救うための支援施設です。
昼間は、さまざまな理由で登校できない子どもたちが集まり自分で決めた学習をしながら人生の目標探しをしています。タ方から夜は、学校から帰宅した小・中学生が集まって学習しています。
立志館では、子どもたちの自主性を尊重しています。
各人が、本を読んだり、パソコンで調べたり勉強を教え合つたり、先生に教えてもらつたりと自分のぺースで学習しています。
立志館の教育が目指すものは人生の志を立てることにありますが、そのために、いのちの尊さを自覚させ、いのちへの使命感を感じさせることが大切と考えています。ひとつしかないいのちを大切にし、一度しかない人生を自分らしく輝かせてほしいからです。

 不登校の原因はさまざまですが、人間関係のトラブル、長期の病気欠席、遊びの誘惑、社会性の著しい欠如等々がキツカケになることが多いようです。
不登校に陥っている子どもに登校を促すことは必ずしも望ましいことではありませんが、しかしほとんどの親は、「なんとか登校してほしい、社会人として自立してほしい」と祈っていると思うんですよ。この親の祈りを受け止めて、立志館は在籍校との連絡を深め、学校生活に復帰できるように支援しています。
立志館を開設した最も大きな理由は、九十九人への教育を充実させることに全力投球しながら最も指導・援助を必要としている一人への指導をほとんどしなかつたことへの苦しい悔いの気持ちにありました。「一人を救えずしてどうして百人を救えようか」という思いが、極めて非効率な教育へと駆り立てたのだと思います。
この4月には立志館で義務教育を終えた中学生6人が高等学校へ進学しましたが高校生活をエンジヨイしているという便りを聞き、本当に嬉しく思っています。新年度も、10人の中学生と理想を追いかけています。
 私がまだ20代の頃、思師の導きにより、著名な哲学者と話をさせていただく機会を得ました。 「人間の主体性とはなにか?」が中心の話題でした。私は「思想である」と主張しました。その老哲学者は「君は若いねえ」と笑われながら「主体性は腰骨を立てることだ」と主張され、最後まで平行線でした。人間が人間らしく生きていくためには人間の生活の形を保つことが大切だと学びました。
朝になったら起き、朝食を食べ、目的をもつて外出し、夜になればぐっすり眠るという基本の形をとりもどすことが、不登校の子にとってまず大切だと思います。また、一日に30人くらいの人の顔を見ることも精神の安定に欠かせないと言われます。みんなでレストランヘ食事に出掛けたり、バスや電車で通うことを勧めたりしているのはそのためです。
 高度経済成長期に代表される戦後の教育においては、子どもたちの学ぶ意欲の源泉を競争意識に求めました。その結果、生活は便利になり豊かになりましたが、自己中心的な価値観が蔓延したことはとても残念です。残された日々、人の幸せに役立つことに喜びを感じる人間を育てるという教育の理想に情熱を傾けたいと思つています。
   (平成19年5月9日インタビユーに応えて)

2007.10.08