開催日 : 平成23年11月18日(金)
対象 : 中等部、高等部に在学する生徒全員

第8回 同窓会講演会 浜松西高のOB で10年前中高一貫校設立時の静岡県教育委員長でいらした杉田 豊さん(高9回)を講師に迎え、中等部、高等部1160名の生徒を前に、「中高一貫教育に期待すること」という演題で講演会を開催しました。杉田さんは、5年前より現在に至るまで浜松西高等学校評議員としてご活躍なさっています。本年は、中高一貫校はじまって10年の節目の年になります。
当日の講演内容をかいつまんで紹介します。

 

 

第8回 同窓会講演会
講演内容:
インターネットで浜松西高等学校を開くと、東坂の門、立派な桜の木の写真が出迎えてくれました。概要には、1924年創立。初代校長は英語学者の松田与惣之助氏。“「知・仁・勇」を校訓に掲げ、英国の名門パブリックスクールであるイートン校を手本に「ヤング・ジェントルマン」の育成を目指した”とあります。イートン校は多数の著名人を世界に送り出していることで有名です。

 

  校訓の  

 知とは        高い知性
 仁とは        豊かな心
 勇とは      たくましい心

 を示します。

I. 21世紀が求める人物像
  21世紀の日本の産業界の求める人材には、3つの力が必要です。
  ①志と心 社会の一員としての規範を構え、物事に使命感をもって取り組むことのできる力
  ②行動力 情報の収集や交渉、調整などを通じて困難を克服しながら目標を達成する力
  ③知力 深く物事を探求し考え抜く力
 ハーバード大学に志願する受験生の入学願書では、次の点を評価対象にしており、アメリカ社会の求める人間像が見えてきます。
知的好奇心/知的創造性/勉学の成果/リーダーシップ/責任感/自信/温かい人間性/ユーモアのセンス/他人に対する思いやり/活力/成熟度/率先した行動力/障壁にぶつかったときの反応/先生から尊敬されているか
これらのことは、校訓の知・仁・勇と重なります。そして、豊かな人間性と社会性を育むことが新しい時代を拓く心へとつながると考えます。

豊かな心とは、
①美しいものや自然に感動する心
②正義感や公正さを重んじる心
③生命を大切にし、人権を尊重する心
④他人を思いやる心や社会貢献の精神
⑤自立心、自己抑制力、責任感
⑥他者との共生や異質なものへの寛容など

II. 中高一貫教育に期待すること
 中高一貫教育は、中等教育の一層の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指したものです。この教育の実現は、

  • 併設型の特色を生かす: 6年間を見通した系統的・計画的に指導する。高校から入学した生徒には、中等部から学んでいる生徒と切磋琢磨して能力を伸ばせるようカリキュラムを工夫する。
  • 幅広い教養と高い志を育む: 総合的な学習の時間を活用する。例えば、中等部2年生で、奈良・京都、中等部3年でマレーシア等の外国、高等部1年で現代の課題、高等部2年で研究成果をプレゼンテーションするなどは、具体的な総合的な学習である。
  • 進路希望を実現する: コミュニケーション能力、論理的思考の育成、少人数授業
  • 中・高一体で取り組む: 文化祭、体育祭、コーラスコンクールなど

    などで実践されている。

 知識社会を乗り越えるために必要な要素は、次の4つである。
①健康な身体、②知的好奇心(向上心)、③我慢する心(自立)、④己を信じる 人生とは、自分の手でしか開けない。進歩向上したいと望んでいるが、努力を払いたがらない。勉強に耐えられないのは、現代人の病。人生の成功は知識ではなく、勉強によって得られる。困難に立ち向かわなくてもすむようになるのは、人生が終わり、修養の必要がなくなったときだけ。勤勉・正直・感謝であること。勉強もスポーツもこつこつやらなければ、道は開けない。己を信じて頑張って欲しい。国際社会のリーダーとして輝くようエールを送りたい。

III. 脳と学習
第8回 同窓会講演会 脳は、体重の2%程度の重さ、約1000億個の神経細胞(ニューロン)によって営まれている。神経細胞は増殖能力がなく、1日数万個減少する。しかし、2000年米国科学アカデミー紀要に、“鍛えれば活性化し、増殖する”ことが発表された。脳を育てるには、文章を声を出して読んだり、人の話を聞いて理解したりすると、右側の脳も左側の脳も活動する。また、試行錯誤を経ることで、脳内に強固なシナプスが形成され、練達していく。コンピューターゲームをしているときには、一部の脳しか使われていない。文章能力や国語力は、勉強や仕事の基本である。この2つを鍛えるには、本を読むことである。しかも、膨大な量を読むことが一番の近道。

 

最後に、杉田さんは、後輩の前でお話しできたことを私の宝にしたい。皆さん、健康で活躍されることを祈っていますと締めくくられた。

この講演で使われた資料(PDF 1.05 MByte)は ここをクリック してご覧ください。