工藤幸徳さん(高39回) 朝陽に照らされる南アフリカの大地を初めて見たときの感動、広大な大地を前に、「自分に何ができるのだろう」と不安と期待を胸に抱いて3年前に赴任したのを今でも覚えています。
 私が日本人学校への勤務を考えたのは、海外の教育事情を知りたいという思いや日本文化との違いに直接触れることのできる喜びを感じたいと思ったからです。それ故、在勤中は、日本人学校での教育の充実を図るとともに、現地をより深く理解するための活動をしようと考えました。
 ヨハネスブルグでの生活で、まず目に飛び込んできたことは、日本と同様の交通渋滞でした。私の持っていたアフリカのイメージを払拭するかのような車の量、大きなショッピングモール、立ち並ぶ大きな家々・・・。
しかし、各交差点には物乞いをする人々、少し街を離れると壊れそうなバラックに住む多くの黒人・・・近代的な街とは対照的なその光景にも強く驚かされました。
 日本人学校では、海外にいながらにして日本と同等、もしくはそれ以上の教育を受けられる事がメリットと考えます。しかし、ヨハネスブルグの治安は現在、悪化の一途をたどっているため、子どもたちは自由に外を歩けないのが現状です。
犯罪件数は日本の百倍以上を記録し、日本人学校をはじめ各家庭には、高い塀の上にエレクトリックフェンス、窓には鉄格子がはめられています。
そんな中、子どもたちの運動する場の確保には、保護者からも強く要望がありました。そこで、土曜日に子どもサツカー教室を立ち上げることを保護者と共に行いました。活動開始時より多くの支援・支持を受け、赴任3年目の時には、日本人会のクラブとして正式に認められるほどになりました。
 また、私自身が、黒人居住区の子どもたちに将来の夢などをインタビューしたり、サッカーの指導を行ったりとより多くの子どもたちに触れ合う機会をとりました。
工藤幸徳さん(高39回) さらに、大きな問題の一つであるHIV/AIDSについて、支援団体やエイズ孤児院を訪れる中で、お互いに助け合う姿を見たり、サポートグループのリーダーとして頑張っている人々に出会い話を聞いたりしました。南アフリカの格差のある厳しい現実を目の当たりにした驚き以上に、生活改善を目指し草の根で頑張っている現地の人たちが大勢いることも知りました。
 このような人たちとの出会いが国際交流を深めていく一歩だと感じるとともに、日本の子どもたちにも広く世界を見据える力を育成していけるよう努めていこうと思いました。

    (現在、浜松市立尾奈小学校教諭)

2008.08.21